借金が返せないとき、自宅や会社にサラ金業者の取り立てがやってくる。そして、脅迫的な言動で人を恐怖に陥れる。実際に手を出したりもする。

そんな、どこかで見たようなシーンがなぜか頭に焼き付いているという人もたくさんいるのではないでしょうか。

カードローンが返せないとき、本当にこのような取り立てはあるのでしょうか。

強引な取り立ては法律上禁止されている

現在の消費者金融大手は銀行系列に組み入れられています。社会的な信用もずいぶん高いもの。

そんな大手の消費者金融から取り立てに来ることなど考えられませんが、知らなければそういうこともあるのかと思うかもしれません。

大手は来なくても、中小の消費者金融ならやってくるのではないかと思う人もいるのではないでしょうか。

実際、債権を買い取るサービサーもいますし、買い取った債権に基づき請求しても違法ではありません。

消費者金融の社会的評価と関係なく、悪徳業者がやってくるのではないかという心配をする人もいるでしょう。

ですが、強引な取り立ては法律で禁じられています。消費者金融の根拠法令である貸金業法第21条に、禁止事項が列挙されています。

威圧的な言動はもちろん、正当な理由がないのに勤務先に連絡・訪問したりすることは禁じられているのです。

自宅に連絡、訪問するとしても、午後9時以降翌朝8時まではやはり禁じられています。

家族に対して取り立てることも禁止です。

「おたくのお子さんが借金を返さない。保護者なんだから替わって払ってくれ」も、世間には普通にありそうに思えますが、ダメなのです。

また、債権を買い取るサービサーも届出制で、法の監督下にあります。

強引な取り立てがもしあったら

法律で禁じられていますから、消費者金融が強引な取り立てをすることはないはずです。

ですが、まれに強引な取り立てが事件として報道されることがあります。

本社が指示していなくても、現場レベルでノルマをこなすため、つい威圧的になったりすることはあり得ます。

そんなときは金融庁の、金融サービス利用者相談室に連絡するといいでしょう。

迅速に止めてもらいたいのなら、消費者金融や債権回収会社の本社に電話するのも効果的と思われます。

コンプライアンスが強く求められるご時世です。放置されることは少ないでしょう。

強引な取り立ての事例

違法取り立ての事例で、最後にあった大きな報道は、2006年のアイフルの件です。

これは全社的に取り立て方法、営業活動に違法事例が見つかったもので、「アイフル被害者の会」も結成されました。

結局アイフルは金融庁から全店業務停止命令という重い処分を受けました。

これをひとつのきっかけとして、アイフルはその後事業再生ADRまで余儀なくされたのです。業界には、大きな教訓として残っています。

さらに少し前、これは消費者金融ではなくビジネス金融である商工ローンについてですが、「日栄」「商工ファンド」という2社の強引な取り立てが世間を騒然とさせました。

返済のできない経営者に対し「腎臓を売れ」などと脅迫していた音源が報道されたのです。

これは刑事事件となりましたし、法人2社も大きなダメージを受けることになりました。

それ以降、大きな事件は発生していません。強引な取り立てに頼るビジネスモデルが完全に消滅したということでしょう。

なお、威圧的、暴力的な取り立てを受けたときは、借金があるのが事実であっても、恐喝罪が成立する可能性があります。

やりとりを録音しておくのは現代では極めて簡単です。この際は警察の出番です。

法律条文で禁じられているのは理由あってのこと

貸金業法にわざわざ、取り立てに関する禁止事項が列挙されているのはなぜでしょうか。

それは、かつて実際に強引な取り立てがあり、社会問題と化していたからです。

もともとの消費者金融は、確かにグレーゾーンすれすれの業界でした。

業界トップの武富士が、当初から強引な取り立てをして大きくなっていったことはよく知られています。

ですから、人の記憶のもとになっているドラマのシーンも、まるで絵空事というわけでもなかったのです。

違法な取り立てがあるとすれば闇金

さて現在、ドラマのような強引な取り立てがあるとすれば、それは法律の監督の下でない貸金業を営む業者でしょう。

つまり闇金です。貸金業許可を取得せず、あるいは取得していても看板だけに使っているような業者のことです

最初から法律に基づいた業務をおこなう気がないので、取り立ても合法的にはおこないません。

だからといって、闇金の強引な取り立てに抗えないわけではありません。

もし闇金から借金してしまい、返済できずに苛烈な取り立てを受けているという場合、弁護士に相談するといいでしょう。闇金から借りた元金時代返さなくてもいいというのが一般的な解釈です。

現在の督促実務

現在は、合法的な業者から借り入れたときの強引な取り立てというものはありません。

もしあるとすれば消費者金融スタッフの暴走ですから、止めてもらいましょう。

では現在、消費者金融は利用者から返済がない場合、どう対処しているのでしょう。

これについては、そもそもビジネスモデルが違うということがあります。

かつては、返済力をきちんと見ないでとりあえず貸し付けるビジネスだったわけです。だからこそ、焦げ付いてしまうと大変で、業者の側も必死で取り返そうとしたのです。

現在ではそもそも借金の入口の段階で絞り込んでいて、安定した収入のない人に気軽に貸し付けることはしていません。

法律上の問題もあります。

貸金業法には総量規制というルールが設けられています。これは、利用者の年収の3分の1までしか貸付けできないという、業者に課せられた義務です。

利用者の年収によって、法律上借入れできる上限が決まっています。借入可能額の上限は貸金業者すべてにまたがって適用されるので、業者が変われば新たな貸付けをしていいということにならないのです。

グレーゾーン金利が廃止になり、金利も下がっていますから、融資の入口をきちんとしないと、利益は上がりません。

現在の消費者金融は、貸し倒れになる融資をしないようにしているわけです。

借金を返せないとどうなる?

では、厳しい審査を突破して貸してもらった人については、その後返せなくなったとしても、現代では普通に生活できるようになったのでしょうか。

これはそういうわけにはいきません。ただ、威圧的な目に遭うことがなくなったというだけで、返せなければ辛い目に遭うことは避けられません。

威圧的な取り立ては消滅しても、合法的な回収手段は無数にあります。

例としてこのようなもの。

裁判(少額訴訟)
給与の差し押さえ

少額訴訟はあっという間に結審してしまいます。他にも、同じく裁判所の手続きである「支払督促」を受けることもあります。

裁判が確定しても払わなければ、給与差し押さえが来ます。

給与の手取りの4分の1を持っていかれてしまいます。

勤務先がこの実務をしなければなりません。ですから、勤務先での信用は地に堕ちます。

借金が多額でどうにもならなければ、最終的には自己破産をすることになるかもしれません。

もっとも、考え方次第です。

自己破産でリセットしてやり直せると考えれば、これも立派な選択肢です。勤務先に知られず破産できてしまうことも多いものです。

まとめ

現代では、ヤクザまがいの取り立てを受けることはありません。

ですが、強引な方法がなくなったとしても、借金を返さなくて済む方法とすると、自己破産ぐらいしかないものです。

借金は怖いもの。それだけは肝に銘じておきましょう。