「サラ金」という言葉、このところは、頻繁には聞かれなくなりました。

サラ金に置き換わった言葉である「消費者金融」なら、年齢に関わらずある程度のイメージを持てるでしょう。

それでは、言葉としてサラ金が単に消費者金融になっただけなのかというと、そのとおりでもあり、それだけではとうてい語り尽くせないともいえます。

令和の時代に、サラ金という言葉の持つ意味について振り返ってみましょう。

サラ金とはなにを指す?

サラ金でも消費者金融でもいいのですが、この言葉の指し示す対象はおわかりでしょうか?

もともとサラ金とは、「サラリーマン金融」を略しただけの言葉。ただの略語に過ぎず、本来プラス、マイナスの評価は帯びていません。

しかし、現在ではおおむね、マイナスの評価を帯びて使われる言葉でしょう。消費者金融のことをあえてサラ金というときには、ある種の揶揄した響きがあります。

現代では、カードローンを扱っている、プロミス、アコム、アイフルなどの金融機関が消費者金融、そしてサラ金という言葉に含まれることはおわかりでしょう。

これらの業者は駅前やロードサイドにカラフルな看板の店舗を出しています。店舗の中には自動契約機があります。

ビジネスモデルが揃ってよく似ているこれらの業者のことを、世間は一般的に消費者金融と呼んでいます。

ですが、消費者金融という業界区分は実のところ存在しません。

もともとは業界自身がイメージアップを図って付けた名称だったのですが、それにも関わらず、その言葉の示す範囲は決して明確ではないのです。

ですが、お金を貸してくれる業者だったら、他にもあります。

信販会社やクレジットカード会社、商工ローンなど。それらについて、サラ金や消費者金融と呼ぶことはありません。

ですが、業界団体である日本貸金業協会には、これらのすべてが含まれます。

貸金業を営む業者というくくりしか、業界には存在していないのです。

ですから、サラ金とか消費者金融といっても、そもそも明確な定義のある用語ではないわけです。

サラ金・・・定義なし
消費者金融・・・定義なし

消費者金融を定義する

明確な言葉でないのだとしても、サラ金、消費者金融とはなんなのかをここで定義しておみましょう。

あくまでもこの記事の中での定義ですが、世間での使われ方、業界の認識とズレてはいないはずです。

定義は次の通り。

個人向けの貸金業を主としておこなう業者のうち、クレジットカード会社や信販会社でないもの信販会社、クレジットカード会社も、個人向けのカードローン商品を発行しています。

ですがこれらは消費者金融と呼ばれることはありません。今後もしばらく可能性はないでしょう。

世間で消費者金融と呼ぶものは、大手のイメージかもしれません。

ですがサービスを競う中小消費者金融も無数にありますので、これらを除外する必要はないでしょう。

かつてはサラ金、さらに複雑だった

サラ金、消費者金融という言葉に誰でもイメージは持つのに、その対象が明確でないというのは不思議です。それでも、現代のほうがずっと明確です。

20年近く前になると、かなり複雑でした。

サラ金と呼ばれる業者を見てみるとまず、大手では武富士がありました。

他にもディック、ユニマットレディス、シンキ、アイク、三和ファイナンスなどの消え去ったブランドが記憶にある人も多いでしょう。

それだけではありません。信販会社など隣接業務を行う業種も、積極的に貸金業に手を出していました。

以前は信販会社で、現在はアイフル傘下のクレジットカード会社であるライフカードなども、自動契約機を用意していました。

現在では消費者金融に含まれることのまずない、このようなサラ金隣接業者も多数あったのです。

後述のサラ金問題においては、このような隣接業者も問題の当事者だったのです。

ちなみに、これらの業者がなくなったのはなぜでしょうか。

グレーゾーン金利が2006年の最高裁判決で無効とされ、過去の高金利が違法とされたことで収益が減り、さらに過払い金が発生したためです。

大手の武富士も、過払い金請求によって倒産してしまいました。

生き残った消費者金融大手は、銀行の傘下に入っていきました。

前述のライフカードも、収益の7割が貸金関係だったので、大きな打撃を受けたのです。アイフル傘下に入るまでは紆余曲折がありました。

現在のライフカードでもお金は借りられますが、サービスの利便性は、消費者金融よりも落ちるものです。

信販最大手のオリコなども、グレーゾーン金利廃止で大打撃を負った口でした。

サラ金はネガティブなイメージ

サラ金業者が林立していた頃は、「サラ金地獄」「サラ金問題」などという言葉も日常化していました。

サラ金という言葉を使う際、必ず社会問題がセットになっていたのです。

このため世間の人は、おおむねサラ金に悪いイメージを持っています。

業者の側からは決して使いたくない言葉です。

現在では消費者金融といっており、これが世に定着しています。ですが、当時を知っている人にあっては、銀行系列になった業者も依然としてサラ金なのです。

サラ金問題

消費者金融、貸金業は、社会問題が先に発生して、その後法整備が進んでいった業界です。

現在からすると信じられないような状況も、その当時は普通だったということが多々あります。

当時起こったサラ金問題は、取り立ての問題、それから金利の問題です。

恐ろしいのはサラ金問題が、TV-CMによって世間的に一見企業イメージが向上していた裏側で進んでいたという点です。

サラ金の取り立て

当時は法の規制もまだなく、返済できない人に対しては過酷な取り立てがおこなわれていました。

夜中の自宅訪問や、職場への訪問、大声で騒ぐなど、嫌がらせとしか思えない取り立ても行われていました。

中には、電報を使った嫌がらせまで行われていました。深夜でも届けなければならないためです。

グレーゾーン金利とは

現在は利息制限法に従い、消費者金融は上限金利18.0%で貸し出しています(限度額100万円未満の場合)。

昔から利息制限法はありました。にもかかわらず、罰則のないこの法律はザル法だと言われていました。

消費者金融は、上限金利29.2%などといった、現在では考えられない高い金利で貸し付けていたのです。それでもまだ、これは良心的な数字でした。

利用者が利息制限法より高い金利であっても、納得して支払った弁済は有効だという規定に頼っていたのです。

ブラックではないが、ホワイトともいえない、灰色の領域の金利であったわけです。

2006年の最高裁判決により、この高利は違法とされたのです。納得して支払ったわけでもない「みなし弁済」が認められなくなったのでした。

この判決により、過払い金請求が発生し、多くのサラ金が市場から退場していったのです。

まとめ

現在ではイメージが大幅に向上した消費者金融。

ですが、これは法律が完全に整備され、そこからはみ出た営業をするとすぐに事件化されるという状況があっての話です。

「サラ金」と呼ばれた過去を遡ると、それがよくわかります。

現在では取り立ても穏やかになり、金利も下がりました。

ですが、お金を借りるというのが大変なのは昔も今も変わりません。計画的に利用しましょう。