総量規制とは

総量規制とは、年収の1/3以上の借り入れを禁止している法律のことです。

借入した人の返済倒れ、または賃金業者による過剰貸付を防ぐことを目的として、2010年に施行されました。

この法律により、年収600万円の人は、200万円までしか借り入れできなくなりました。

総量規制の適用範囲

総量規制は、すべての賃金業者からの借入額に適用されます。

そのため年収300万円の人が、A社から100万・B社から100万円・C社から50万円・D社から50万円借り入れした場合は、C社・D社からの借入れができなくなります。

これにより、230万人いた多重債務者が18万人にまで減ったそうです。

総量規制の対象となる借入

総量規制の対象となるのは、貸金業者が行う貸付、かつ個人の借り入れです。

貸金業者とは、財務局や都道府県に登録をしている、金銭を貸し付け業者のことを指します。

クレジットカードのキャッシング

クレジットカードのキャッシングは、金銭の貸付けを行うため総量規制の対象です。

ただし、クレジットカードで商品を購入する場合は該当しません。

リボ払い・分割払い・ボーナス払いなどは、貸金業法ではなく割賦販売法が適用されます。

事業者金融

事業者金融は、個人事業主や中小企業などを対象にしたローンです。

商工ローン・ビジネスローンなどが該当します。

短期で高金利で、担保や連帯保証人なども必要ないため総量規制の対象です。

消費者金融

消費者金融は、個人への貸付を目的とした賃金業者です。

銀行より高金利で貸し付けているため、総量規制の対象になっています。

アイフル・アコム・プロミスなどが有名です。

総量規制の対象とならない借入

以下のものは賃金業者からの借入に該当しないため、総量規制の対象とはなりません。

不動産取得または改良のための貸付け、およびつなぎ融資
自動車ローン
高額療養費のローン
有価証券担保ローン
不動産担保ローン
不動産の売却により返済可能なローン
手形割引(融通手形を除く)
金融商品取引業者が行う500万円超えの貸付け
貸金業者を債権者とする金銭貸借契約の媒介

(施行規則第10条の21第1項各号)

引用:日本貸金業協会

これ以外にも、法人と貸金業者以外からの借り入れは総量規制対象外です。

法人の借り入れ

法人は総量規制の対象外となるため、年収の1/3以上の借り入れも可能です。

ただし事業計画・資金計画・返済計画などを提出し、返済能力があることをアピールしなくてはなります。

個人の時と同様に、賃金業者が返済できないと判断すれば、年収の1/3以下の借り入れは不可能です。

貸金業者以外からの借り入れ

総量規制は、預金や為替サービスを提供していないノンバンクを対象としています。

そのため銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫などからの借り入れは、総量規制の対象とはなりません。

中には消費者金融からの借り入れはできなかったけど、銀行からのカードローンの審査には通過したというケースもあります。

例外的に借入できるケース

総量規制の対象とならない借り入れのうち、以下のものは例外的に借り入れ可能です。

顧客有利となる借換え
急を要する医療費の貸付け
社会通念上、急を要する費用をまかなうための貸付け
年収の3分の1以下の貸付け(配偶者込み)
個人事業者向けのローン
銀行ローンの審査を通るまでの「つなぎ資金」に関する貸付け

(施行規則第10条の23第1項各号)

引用:日本貸金業協会

顧客有利となる借換え

顧客有利となる借り換えとは、複数の賃金業者から借りていた資金を一つにまとめた時に、金利が下がる状態を指します。

例えばA社の金利を10%・借入金を20万円、B社の金利を15%・借入金を30万円とした場合、返済をA社にまとめてしまえば5%分金利が安くなります。

このように、借り換えを行うことで返済が有利になる場合は、例外的に借り入れが認められています。

配偶者による年収の3分の1以下の貸付け

夫の借り入れが総量規制内であれば、収入を持たない配偶者でも借り入れできることを示したものです。

例えば夫の年収が300万円・借り入れが50万円の場合、配偶者は50万円まで貸金業者から借り入れできます。

ただし実際にこの例外が適用されるケースは多くありません。

収入のない配偶者に対し、貸金業者が貸し付けを許可することが少ないからです。

個人事業者向けのローン

個人事業者向けのローンは、生活を目的とした借り入れではないため、実績・事業計画・資金計画などがしっかりしていれば、年収の1/3以上のお金を借りられます。

収入証明書の提出が必要なケース

個人での借り入れは、返済能力を詳しく審査するために、50万円を超える金額もしくは他社借入分も合わせて100万円を超える借入れの場合に、収入証明書の提出が必要になります。

収入証明書の提出が必要になるケースはさまざまです。

例えばA社から30万円・B社から30万円借り入れる場合は、収入証明書は必要ありません。

しかしA社から60万円・B社から30万円借り入れる場合は、収入証明書を提出しなければなりません。

他社借り入れ分は100万円を超えてはいませんが、A社からの借入金が50万円を超えているからです。

収入証明書として使える書類は、以下の通りです。

源泉徴収票
支払調書
直近2ヶ月以上の給与の支払明細書
確定申告書
青色申告決算書
収支内訳書
納税通知書
納税証明書
所得証明書
年金証書
年金通知書

総量規制の注意点

借入額をごまかそうとしても無駄

貸金業者はFINEと呼ばれる独自ネットワークによって情報交換しているため、借入金額をごまかそうとしても無駄です。

総量規制以上の金額を借りても罰則などはありませんが、その分賃金業者からの信頼を失います。

ちなみに貸金業者が総量規制を守らなかった場合は、業務指導などの行政処分をうけ、最悪の場合は営業停止になります。

総量規制内でも借り入れできない場合がある

総量規制いっぱいまで貸付すると、貸し倒れのリスクも高くなります。

そのため総量規制内であっても、過去に返済遅れや延滞期間などがあると、借り入れできない場合があるようです。

中小企業の貸し剥がしが発生することがある

貸し剥がしとは、貸金業者がお金を貸さなくなったり、期限内に借金返済を迫ることを指します。

総量規制により多くの人が無理な借り入れをしなくなったことで、貸し剥がしが発生する中小企業も増えました。

期限内の借金返済を迫られたことで、無理にクレジットカードを現金化したり、闇金業者からお金を借りたりしたところもあったそうです。

まとめ

総量規制は、賃金業者が個人に貸し付ける場合に適用されます。

そのためクレジットカードのショッピング利用・銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫などからの借り入れは対象にはなりません。

借入する人が違反しても罰則はありませんが、貸金業者が違反すると業務指導などの行政処分を受けます。

総量規制にごまかしは効きません。

FINEと呼ばれる独自ネットワークにより、嘘の申告は必ずばれます。

1回嘘をつくと信頼も失うので、収入の申告などは正直に行いましょう。